
1976年、イ
エスはアルバムをリリースしていませんが、1975年暮れから1976年にかけて、イ
エスの各メンバー(
スティーヴ・ハウ、クリス・ス
クワイア、アラン・ホワイト、ジョン・アンダーソン)が、それぞれ、アトランティック・レーベルからソロ・アルバムをリリースしました。
そうした中で、1976年5月7日、最後に、ジョン・アンダーソンが、サンヒローのオリアスをリリースしました。このアルバムはジョン・アダーソンにとっての初のソロ・アルバムであり、内容、装丁ともに、メンバーの全てのソロアルバムの中で最も気合の入ったものになっていました。

ジャケットは、
ヒプノシスの監修のもと、ロジャーディーンのこわれものをルーツにデイヴ・ロウが描いています。この豪華絢爛な装丁はエンボス加工され、インナーは絵本のような装丁となっています。この重厚感はLPじゃないとなかなか味わえません。

このアルバムは、滅びゆく惑星サンヒローに住むオリアス、ランヤート、コクアクの3名が、メロディー、リズム、テンポを通じて、そこに存在する異なる4部族を統一し、当該部族によって作り上げられたハーモニーでムアグレード・ムーバーなる宇宙船を動かし、サンヒローから間一髪脱出するというストーリーに沿って演奏されます。
これは、ジョン・アンダーソン書き下ろしの、
ノアの箱舟的は一代
サイエンス・フィクションです。まさに、こわれものの絵の世界観を基軸としたコンセプト・アルバムです。

曲は、流石にヴォーカル中心で煌びやかに非常に肯定的な印象の演奏が繰り広げられます。メンバーの中では、最もイ
エスらしい演奏です。他方、他のメンバーのように、理論的に音楽を極めているものとは思えない点はかなり微妙で、彼の作る音楽は、壮大なのですが、なんだかプリミティヴな儀式の音楽に近い気がします。コードが単調で平坦なんですよね。本筋は天国への架け橋の拡大解釈版なのかもっていう気がします。結局、構想は面白いけれど、イ
エスの楽曲のパーツ感は否めませんでした。


こうして、この時期に発売されたメンバー個々のしかも初のソロ・アルバムを順に見ていくと、イ
エスの
サウンドを分析する意味では非常に重要な役割を担った作品群であるといえると思います。すなわち、これら5人のエゴの均衡の元、微妙なバランスに支えられてこそ、見事なイ
エスサウンドが具現化していることを
如実に示しているといえるように思います。結論:イ
エス・
サウンドは、実にfragileな音だったのですね。