Cafe Evil 9

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Led Zeppelin / Presence

 1976年3月に発売されたレッド・ツェッペリンの7番目のアルバム「プレゼンス」です。このアルバムも1976年です!やばくないですか1976年!
 ツェッペリンは、アルバムを制作する度に新たな試みを加え、常にそのサウンドを進化させてきました。・・・と言っても、最後のスタジオ盤CODAが出たのは1982年なので、大昔の話ではありますが。しかも、1枚若しくは1曲たりとも駄作を発表することが無く、しかも、後に発表されたアルバムは、常に、前に発表されたアルバムを上回る何かを備えていました。こうしたアルバムの制作姿勢について、他に比較可能なバンドは存在しないのではないかと思います。
 プレゼンスは、そうしたツェッペリンが過去に発表してきた数あるアルバムの中でも極めつけの1枚でした。Presenceを調べると第一の意味は「存在すること、存在(感)、いること(by 英辞郎on the web)」であるように、音の存在感が只者じゃないんですよ。アルバム・タイトルは、そうした彼らの自信の表明に違いないですし、それを優に認めざるを得ないだけの迫力に満ちていました。

 プレゼンスは、アメリカにおいて発売前の予約だけで、プラチナディスクを獲得してたのだそうです。ファンの期待もそれだけ大きかったと言うことですね。
 カヴァー・アートはヒプノシスのデザインです。各写真の中に異様にしかも自然に鎮座する黒いフォルム。オベリスクは、存在そのものの象徴なのでしょう。
 ちなみに、オベリスクとは、wikipediaによれば、「オベリスク(方尖塔、仏: obélisque、英: obelisk)は、古代エジプト(特に新王国時代)期に製作され、神殿などに立てられた記念碑(モニュメント)の一種。近代および現代においては、エジプトに依らず欧米の主要都市の中央広場などにも建設され、その地域を象徴する記念碑である。….. オベリスクの名称は後世のギリシャ人がobeliskos(串)と呼んだのが起源」とのこと。さらに、ちなみに、この物体は、ずっとオベリスクと呼ばれてきましたが、ロバート・プラントは、オベリスクとは呼んでいないというようなことをインタビューで語っていたそうです。
 1968年に公開されたスタンリー・キューブリック監督の映画「2001年宇宙の旅」に登場するモノリスからのインスピレーションでしょうか、ジミー・ペイジの黒魔術趣味の象徴でしょうか。
 この黒い物体のおかげで、その後目にする柱系の物体が全部これに見えるようになってしまいましたし、テーブルで食事をしていると真ん中にこれを置きたくなったりしてしまいます。このカバーアートは、そのくらい尾を引くインパクトでした。


東京のオベリスク


千葉のオベリスク


沖縄の中城城跡にもオベリスク


 さて、プレゼンスは、過去のアルバムに見せた彼らのサウンドの様々な要素のうち、ロックな部分を究極にまで突き詰めたものです。キーボードレスという点からも、ロックに対する思い入れや執着が強く感じられます。
 シンプルなリフでゴリ押しの曲で固められていて、シメに渋いブルースという構成で、言葉で書くと至って普通なのですが、これまでの半世紀の間に、このグルーブ感のロックというのはほかに見当たらないのではないかと思います。
 冒頭の「アキレス最後の戦い」ではギターのみで分散和音が数小節奏された後、いきなりハイテンションのジャムに突入しボーカルパートを2コーラス経てギターソロに突入するまでのスピード感が最高です。よく歌う哀愁を帯びたギターソロも実に美しく、一般に天国への階段と並び非常に人気の高い曲です。


 しかし、"プレゼンス"を如実に示すのは、2曲目以降のリフ主体の5曲だと思います。限りなくヘヴィーにドラムス、ベース、ギターが一体となって呪術的に繰り返されるリフ。前作において、統一されたサウンドから、ここにきて、更にその粋が取り出されたという印象です。音数を最小限に留めヘヴィーなリフとキメ、そしてブレイクで形作られたロールしないロック。2曲目のフォー・ユア・ライフは、その全てを物語っています。実に硬派です。以降、ロイヤル・オルレアン、ノーバディズ・フォールト、キャンディ・ストア・ロック、何処へと極めつけのリフの曲が続きます。この辺りになると、私的には、もうロック経典以外の何物でもないです。もう、崇めたてるばかりでコメントするフレーズさえ出てこない。聴いたことがない人たちは問答無用でこの音の塊を体感するしかない、と思います。
 終曲のティー・フォー・ワン、これは、ツェッペリンの音の原点を明確に提示するものであり、"プレゼンス"の証明そのものです。ツェッペリンは、ウィリー・ディクソン作のアイ・キャント・クワイト・ユー・ベイビーに始まったように古いブルースの数々をオリジナルのスタイルに消化して聴かせ、また、シンス・アイヴ・ビーン・ラヴィング・ユーを長年のセットリストに加えるなど、ルーツに対する執着を見せてきました。そして、ここにきて、9分強にわたるブルースでアルバムを締めているのです。
 ・・・概観すれば、ファンから見た在るべき姿、彼らの求めるもの、ルーツがこのアルバムに収斂されたといったところでしょうか。