ユニヴェル・ゼロは、ベルギーのグループで、所謂、チェンバー・ロックの旗手的存在です。チェンバー・ロックとは、古典楽器を用いて室内楽的なアンサンブルを聴かせるいわゆるプログレッシヴ・ロックの一形態です。室内楽といってもバッハやヘンデルを想像すると大間違いです。ユニベル・ゼロの音は、現代音楽的な手法で中世暗黒時代を体現させる狂気の音です。
他に存在しないだろうと思えるくらい気味の悪い音の羅列を体感すると、体が弱っていると逝っちゃうかもしれませんね。メンバーはきっと、変な音の飛び方を楽しんでますね。中心人物ダニエル・ドゥニが影響を受けた音楽は、某誌によれば、中世宗教音楽、トラッド、バルトーク、ストラビンスキー、ヘンドリックス、ビーフハート、ソフト・マシーンとのこと。
1977年、本作「1313」をレコーディング、1978年、ユニヴェル・ゼロは、ヨーロッパの少数のアーチストによりロック・ミュージックへの新たなアプローチを模索するムーブメント、R.I.O.(ROCK IN OPPOSITION-反対派ロック)に参加しました。R.I.O.は純粋に音楽を追求するための商業主義ロックからの独立思想運動なんだそうです。Art Bears, Stormy Six, Samla Mammas Manna等硬派なバンド群から成っていたようです。
1313の世界は、フリーフォームではなく緻密なアンサンブルにより構築された現代音楽の世界です。きっと、彼らの3rdアルバムくらいから遡って聴いてみれば、初めてこの1313もロックなんだと評価できるのではないかと思えるほどに、病的で且つクラシカルな演奏です。しかも、極めて無機的です。
暗黒世界の帳の中で演奏される音楽。特にバス-ンの暗鬱な響きがユニベル・ゼロの音の神秘性を決定付けているように思われます。ある意味ロックの懐の広さを体感できる貴重な一枚です。