そして、ピーターの代わりに、シンディ・キャッツ、ジ・イン・クラウド、トゥモロウ、ボーダストを経てスティーヴ・ハウが加入しました。クリス・スクワイアの誘いがきっかけだったということです。
こうして、第2期イエスは、1970年4月頃に編成されています。改めて、メンバーの名前を書き出すと、Jon Anderson(vo),Chris Squire(b),Bill Brufford(dr),Tonny Key(org),Steve Howe(g)です。
1970年10月、第2期イエスによる新作のレコーディングが始まりました。そして、このレコーディングと並行して、10月31日、イエスは、クイーン・エリザベス・ホールで2度目のソロ・ライヴを行っています。このライヴでは、アストラル・トラベラーなどの過去2枚のアルバムに収録されていた曲に加え、早くも、クラップ、ユア・イズ・ノー・ディスグレイス、オール・グッド・ピープルなどが演奏されています。
この後、イエスは、1971年1月8日、オランダでの公演を皮切りに、アイアン・バタフライやダダに同行し、The Age of Atlanticと題するアトランティック・レーベルの新人のプロモーション・ツアーで演奏しています。
そして、イエスは、1月29日、3作目に当たる”The Yes Album”を発表しました。邦題は「サード・アルバム」です。・・・そのまんまスギ(笑)。
The Yes Albumというタイトルに自信が漲っているように、所謂プログレッシヴ・ロック的な音の形が完成しています。これを聞くと、2ndまでの混沌とした音は何だったんだろうと思ってしまうような別世界です。レコードのAB面ともに、大曲2曲に小曲を挟み同じ構成にしているところもアナログ時代ならではの聴かせ方の秀逸さが出ていますね。そして、楽曲の緻密さが革新的に変化している点は、やはり、新加入のギタリスト、スティーヴ・ハウの存在ですね。大きすぎです!

裏面です。アトランティック・レコードのロゴが入っていますが、その枠内の「SUPER」の文字がポイント!実は、UK初盤なのでありました。
スティーヴ・ハウのアコースティックギターがジャズロック的なアプローチで非常にアングラなイメージだったバンドの曲想を払拭し、若干手詰まり気味で閉塞的だった音を見事に再構築させたという印象です。バンドの音としての纏まり質感も数段・・・いえいえ、数百段!向上させています。
そして、このアルバムに収められたナンバーは、以降、ライヴのセットリストに必ず加えられてる重要なものばかりです。録音は、ロンドンのアドヴィジョン・スタジオで行われました。クラップだけはライヴ録音で、アナログ盤には、「recorded live,Lyceum,London」とクレジットされています。スティーヴ・ハウ加入後、ライセアムでの公演は、1970/07/17(Fri)ブラック・サバスやユーライア・ヒープらとのステージ、そして、1970/12/18(Fri)の深夜から夜明けまで行われたイエス・クリスマス・パーティーの2回であり、録音は後者の方であったようです。
また、ジャケットを見ると、トニー・ケイの足に包帯が巻かれています。これは演出でもなんでもなくて、実は、1970年11月23日にメンバーの載った自動車がロンドン市内で正面衝突の事故を起こし、他のメンバーは無事だったそうなのですがトニー・ケイだけが足を骨折したのだそうです。そこで、そのままジャケット撮影が行われたために、このような結果になってしまったということです。

インナーの写真です。真ん中で大写しになっているのがトニー・ケイ。やはり当時までは、キーボードのトニーケイが音の核だったんですね。この時点では、次作であっさりとリック・ウエイクマンに交代してしまうのが信じられないくらいです。

レーベルカラーも、当時は、緑赤ではなく、紫オレンジでした。
Your is no disgrace
まず、このアルバムでは、プロデューサー名にエディ・オフォードがクレジットされています。スティーブ・ハウの加入も勿論なのですが、エディのプロデュースによって音楽性が一気に向上したということなんでしょうね。これまでの2枚は何だったんだろうというくらい楽曲の質が一変していることは出だしの数小節を聞いただけではっきりと分ります。曲自体は、ベトナム戦争のことを歌ったものです。ベトナム戦争は、南ベトナム解放民族戦線が南ベトナム政府軍に対する武力攻撃を開始した1960年12月又はアメリカ合衆国と北ベトナムの戦争という観点からは1965年2月7日の北爆が開戦とされ(>wiki)、終戦は1975年4月30日のサイゴン陥落です。このため、当時のロックでは、反戦ソングが数多く作られました。この曲は、ジョンによれば、戦争では生きるために人を殺さなければならないという行為への慰めの歌だそうです。これまでのイエスの楽曲は、前奏、歌、間奏、歌、エンディングみたいな普通の構成をちょっとだけいじったものという印象でしたが、この曲で、ボーカルも含めた全ての楽器のパートが一体となってアレンジされた文字通りシンフォニックなものとなりました。
The crap
アコースティック・ギター・ソロのクラップは、聴衆にスティーヴ・ハウの凄まじさをまざまざと見せつけた際目付けの1曲です。素人にもムード・フォー・ア・デイは弾けるけど・・・って人はそれなりにいるでしょうけど、クラップが弾けるって人はそう簡単には見つかりませんよね。これが弾ければ、ちょっと、楽器屋で試奏してみたくなりそう(笑)
Starship trooper
ロック・ミュージシャン、特に70年代の人たちの一部は、かなり頭を打ってる感のある人たちが多いと思います。たとえば、狂熱のライヴのフィルムの中でロバート・プラントが手を平らにして虚ろな目で「cosmic enargy」と言ってる時の絵なんかかなりやばいなぁと思ったものです。さて、ジョン・アンダーソンなのですが、この頃から、曲にもよりますが、書く歌詞が次第に難解になりつつあります。この曲は自分自身の中の神の歌だそうです。哲学的だと解される向きもあるようなのですが、ホントでしょうかね~って気がするのですがどうでしょう。後の海洋地形学のことなんかを考えると、当時読んでいだ本に影響をされて言葉選びが変化してきたというところなんでしょうかね。でも、多少、意味ありげな歌詞のほうがプログレっぽくっていいかもって気もしますが・・・。曲のほうは、ジョンが全体、クリスが中盤、スティーヴが後半を書いたとされています。ピーターのインタビューでは、かなり昔のジャムセッションで既にこの原型となる曲を演奏していたようでもあります。
I've seen all good people
普通のロックン・ロールっぽい曲です。ステージでは必ず演奏されるようですね。私は、単純すぎてあまり好きな曲ではないのですが^_^;ジョンのインタビューでは、静かに始まり、協会のオルガンのように発展していく曲を作りたかったのだとか・・・遅くないので、是非、そのアレンジで聞かせて欲しいような気もしています。
A venture
地味だけど、美しい佳曲です。このアルバムは、各面が大曲2曲で小曲を挟むという構成になっていますので、B2のこの曲の入れ位置も絶妙ですね。
Perpetual change
ビル・ブラッフォードのリズム感がキメになる曲でしょうか。イエスソングズではドラムソロもちょっとだけ挿入されていますね。このアルバムの最後を締めるのにぴったりな勢いのある曲です。ボーカルパートがゆったりしているのに対し、インスト部分が異常にハードでスピード感があるところが面白いですね。

燦然と輝く「A//1」の刻印!

ジャケットの側面には「ATLANTIC SUPER 2400 101」

これは、邦盤。キャッチコピーの「ブリティッシュロックの若獅子」っていう言葉のチョイスがめっちゃ時代を感じさせますよね!こういうのを見るのも、アナログ集めの楽しいところかな。