Cafe Evil 9

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Kansas / Monolith

 1979年にリリースされたモノリスです。邦題は「モノリスの謎」。
 ファースト・アルバムの時期からそもそも完成の域にあったカンサスのサウンドは、アルバムを発表するに連れ徐々に円熟味を増していき、緻密で重厚なオーケストレーションはついに前作暗黒への曳航で上り詰めるところまで上り詰めました。

 本作は、前作の張り詰めたテンションに比べれば、ややリラックスした感があり、楽器のエフェクト音自体もやや丸みを帯び、ポップス色が若干強まっています。一言で言えばより優美に変貌といった感じでしょうか。

 シングル・ヒットを狙ったに違いないA2-People Of The South Wind、邦題「幻の風」はディスコ・ビートを取り入れ当時かなりショッキングなチューンでした。ケリー・リヴグレンの作曲も振り切れたなぁと思いました。

 曲は非常に良くできており、中間部のギター・ソロなんか抜群にカッコいいのですが、さすがに、今改めて聴きなおしてみると、イントロのキメキメのフレーズが気恥ずかしかったりもします。

 実は、この曲は、そうした曲の風貌ではありながら、カンサスのルーツを歌った重要な曲です。カンザス州(日本のレコ会社は、なぜバンド名をカンサスって濁らない表記にしたんでしょうね。当時読めなかったとか。)はその地にもともと住んでいた部族名から命名されたのだそうです。そして、その意味が曲のタイトル「南風の民」です。【理解を深めるため是非カンザス州の歴史等々をこちらでご覧ください!

 発売当時の国内盤LPにはどうしようもないおぞましい訳詞(歌詞に入ってもいない言葉を勝手に追加した独りよがりなとんでもない誤訳です。)がついています。実際にはケリー・リヴグレンが、州名のルーツに自分自身のルーツを重ねて郷愁を歌ったものであったようです。【カンサスの正しい訳詞はここがオススメ!

 スティーヴ・ウォルシュが作曲したA3落ちてきた天使、そして、ケリー・リヴグレンが作曲したB1故郷への追想は、ポップス色が支配する本アルバムの中でも、かなり練られたオーケストレーションが聴ける大曲です。彼らは、こうした曲においても、エッジの立ったギターのカッティングの使い方など更にロック色を強めてきているのがよく解ります。

 ステイ・アウト・オブ・トラブルは基本サザンロック的なブギです。そかし、ここにおいても初期の南部臭はかなり影を潜めて洗練された印象となっています。キメの一つ一つが実にカッコいいんですよ。カンサス・サウンドのタイトな部分が前面に押し出されてきているといった印象です。

 このアルバムの特徴として見開きジャケットが挙げられます。カンサスが見開きジャケットで発売したスタジオ・アルバムはこれだけしかありません。見開き部分には、地球はすぐに砂で覆われ生まれ変わる、白人は消え、バッファローが蘇る・・・といった詩が書かれ、そうした絵が描かれています。

 このジャケットとアルバムタイトルのモノリスの意味、というか収録曲との関係は、いまだに不明です。実は発売当時の邦盤の帯に「古代インカ帝国モノリス伝説を描いた・・・」と書かれてるのですが、よくこんなデタラメが書けたものだなぁと・・・。

 実際、アルバム自体コンセプトものではないですから、People Of The South Windと絡めて謎めいた雰囲気を演出してみただけかもしれませんね。ケリー・リヴグレンが前作でno returnをknow returnと綴ってみたように。