唯一シングルカットされたにもかかわらずヒットはしなかったそうです。サックスのソロが入っているなど、初期の作品の中でも特に異様です。歌詞が異常に馬鹿げていることもこの曲の特徴です。きっと、スティーヴ・ウォルシュにもそれなりの思惑があったに違いないのではと思えてくるような曲ですが、長年聴いていると、実は、この異質感がすごく心地よくなって来るので妙なものですね。
さて、他方でこのアルバムに収められた他の作品に目を移してみると、これは実に素晴らしいものばかりなのです。ABBAのEagleのようなポップさにスピード感溢れる展開が融合した名曲Icarus-Borne on wings of steelをはじめ、ボーカル・ハーモニーと強烈な変拍子とギターのリフが印象的なAll the world、リフとキメそしてブレイクが鮮やかなChild of innocence、狂暴極まりないフレーズの展開が見事なまでにスリリングなMysteries and mayhemと挙げればきりがないって感じです。
そして、何よりの極め付けは終曲9分強に及ぶThe pinnacle(邦題:尖塔)です。この曲からは、これまで彼らが見せてきた密度の濃いオーケストレーションから、比較的音の隙間を多くして、しかもその分、楽曲そのものの構成が練り込まれたという印象を受けます。そして、そのメロディーラインについて言えば、彼ら特有の哀愁あるいは叙情性が極みに達しています。シンプルであり物語性があり且つ訴えるところの多い歌詞もなかなかのものです。
さて、最後にチャートに触れておくと、本作は、ビルボード最高位70位(1976年2月)、売り上げ25万枚であり、セールスとしては過去のアルバムとほぼ同様であったようです。
記念に買って帰ろうと思っていたミュージアムショップで売られている本やポスターや絵葉書の発色がイマイチだったので、アメリカのallposter.comから本物と同じような発色とサイズのポスターを本物と同じような質感の額を付けてポチりました。今でもオタク部屋の壁にかかっています♪