Cafe Evil 9

ごくごく普通の何の変哲もない平凡でどこにでもあるようなブログです♪

Kansas / Masque

 Kansasが1975年にリリースした3作目Masque、邦題「仮面劇」は、アレンジがややシンプルになり、全体にギターのナチュラルなオーバードライブが耳につく仕上がりとなっています。冒頭には、レコード会社の指示でシングル・ヒットを狙って作曲されたとされるIt's takes woman's love (to make a man) が収められています。

 唯一シングルカットされたにもかかわらずヒットはしなかったそうです。サックスのソロが入っているなど、初期の作品の中でも特に異様です。歌詞が異常に馬鹿げていることもこの曲の特徴です。きっと、スティーヴ・ウォルシュにもそれなりの思惑があったに違いないのではと思えてくるような曲ですが、長年聴いていると、実は、この異質感がすごく心地よくなって来るので妙なものですね。

 さて、他方でこのアルバムに収められた他の作品に目を移してみると、これは実に素晴らしいものばかりなのです。ABBAのEagleのようなポップさにスピード感溢れる展開が融合した名曲Icarus-Borne on wings of steelをはじめ、ボーカル・ハーモニーと強烈な変拍子とギターのリフが印象的なAll the world、リフとキメそしてブレイクが鮮やかなChild of innocence、狂暴極まりないフレーズの展開が見事なまでにスリリングなMysteries and mayhemと挙げればきりがないって感じです。

 そして、何よりの極め付けは終曲9分強に及ぶThe pinnacle(邦題:尖塔)です。この曲からは、これまで彼らが見せてきた密度の濃いオーケストレーションから、比較的音の隙間を多くして、しかもその分、楽曲そのものの構成が練り込まれたという印象を受けます。そして、そのメロディーラインについて言えば、彼ら特有の哀愁あるいは叙情性が極みに達しています。シンプルであり物語性があり且つ訴えるところの多い歌詞もなかなかのものです。

 Kansasの楽曲のうち、オーケストレイションを多用するドラマチックな曲の殆どすべてはKerry Livgrenが書いています。彼はドラスティック・メジャースまでKansasに在籍し、以降も曲を提供しつづけていました。ドラムス・ベース・ギター・キーボード・バイオリン・ボーカルという基本的なバンドの構成がマルチ・プレイヤーのKerry Livgrenの存在により、変幻自在なツイン・ギター或いはツイン・キーボードとなり、インストルメンタルに幅を持たせているのですが、かかる多才振りの中でも取り分け彼の作曲能力には目をみはるものがあります。

 さて、最後にチャートに触れておくと、本作は、ビルボード最高位70位(1976年2月)、売り上げ25万枚であり、セールスとしては過去のアルバムとほぼ同様であったようです。

 ジャケットの絵は、ジュセッペ・アーチンボルドーの「水」です。魚や野菜などを並べて肖像画を描いていた1500年代のミラノの画家です。彼の絵は一度でいいから生で見てみたいものだなぁと思っていたら、なんと、2017年6月から9月まで、上野の国立西洋美術館にやってきました!

アルチンボルドに反応できる人は少数だったのでしょうかね。同じ美術館でフェルメールを見たときにはおしくら饅頭状態で絵に近づいて少しの間頑張って絵の前に陣取るのがやっとという状況したが、このときは、ゆったりと鑑賞することができました。夢みたい!

 記念に買って帰ろうと思っていたミュージアムショップで売られている本やポスターや絵葉書の発色がイマイチだったので、アメリカのallposter.comから本物と同じような発色とサイズのポスターを本物と同じような質感の額を付けてポチりました。今でもオタク部屋の壁にかかっています♪