Cafe Evil 9

ごくごく普通の何の変哲もない平凡でどこにでもあるようなブログです♪

Rush / 2112

 インデックスを読み返してみて、まだラッシュを載せていなかったことに気がつきました。1976年にリリースされた2112です。

 パーマネント・ウエイヴズが発売された直後の81年にエピックから再発された際に、ア・フェアウエル・トゥ・キングズ、神々の戦いとともに入手し、以降、かなり聴き込みました。

 ラッシュを聴く上で絶対に外せないアイテムです。ヒュー・サイムのデザインしたジャケットの水面下で光るレッド・スターは、以降、ラッシュの象徴となりました。ジャケットに写っているメンバーの写真を見ると、髪型やポーズ、風呂上りのバスローブかみたいな衣装のデザインの全てに時代を感じます。当時はこれがカッコよかったんですかね~。

 A面全面を占める20分に及ぶタイトル曲は、アイン・ランドの小説Anthemに感化された故ニール・パート(dr)が作詞した曲です。

 地球には従順な者だけが残った・・・と曲が始まります。シリンクス寺院が管理する社会の中、ある日、主人公は洞穴の中でギターを見つけます。その音色に驚き、素晴らしさを分かち合いたいと司祭に進言するが受け入れられない・・・という流れのお話です。Anthemそのもの!

 内容も時代も竹宮惠子さんの地球へ(1977年からの連載)とも重なります。竹宮惠子さんはアイン・ランド、ひょっとしたらラッシュの影響を受けていたのでしょうか。

 富裕層が支配する近未来世界が舞台のハンガー・ゲームなど、この種の設定物は、その後、沢山出てきましたね。

 アイン・ランドは1905年にペテルブルグで比較的裕福な薬局を営む両親のもとに生まれます。しかし、1917年、レーニンがソヴィエト政権を樹立した10月革命で、一家はペテルブルグを追われクリミアに逃れ、その後紆余曲折を経て、1925年、アメリカに移住しています。こうした、社会の両極の経験を経て、個人が観念されなくなった近未来世界とそうした世界への反抗を書き上げたのかと思います。Anthemの近未来世界、シリンクスの寺院はいずれも社会主義国家を象徴したものです。Anthemも2112もハンガーゲームも、民主主義世界から見ると一代エンタメですが、社会主義世界から見ると反抗の象徴です。このように、こと近年に照らすと、この種の題材は極めてシリアスです。ものの見え方は見る側によって変わるということかと思います。

 久々に2112を聴くと、特定の国を指して「政治体制には問題があるが国民に非はない。文化やスポーツは別である。」という趣旨の脳天気で浅墓で無責任な発言を憂慮せざるを得ません。

 どのような体制の国にも”我々の側から見たいい人”がいることを否定はしませんが、だからといって、国粋主義国家がオーソライズしたアーチスト等に浮かれてカモられ軍備資金を拠出したりしないよう慎重を期したいところです。