このアルバムの極め付けというか芯になっているのがドラグネットのテーマです。ドラグネットはダン・エイクロイド主演で映画にもなったアメコミが原作です。このおバカなとぼけたテーマを展開するのが冒頭の「パニッシュメント・ブルース」です。
これと対照的に続く「身も心も」の感傷的ながらクリーンなトーンの美しさ。そして、オルフェのサンバです。ここでは、各ソリストのバカテクが散りばめられています。フィリピンから突如登場したピアニストボビー・エンリケス。彼の指先は実際見てもらえば分かるのですが、見えない速さです。オクターブを右手を広げて打鍵するスピードの速いこと速いこと。ヤバすぎます。手を拳骨にしてクラスターヒットを多用し、めっちゃくちゃパーカッシヴなソロをとります。
そして、ブルース・フォアマン。彼もまた、めっちゃ早弾きのギタリストです。ミュート・ソロが得意なようで、前半ミュート、後半恐るべきスピードでよくこういうフレーズをギターで弾けるなと思うようなメカニカルな指の動きで実にスムーズにソロを紡ぎ出します。
リッチー・コールのソロはもう病的なくらいに陽気です。ドラグネットのフレーズがちょっとだけ出てきたり、いろいろなジャズの有名なフレーズが顔を出し、なんと最後はソニー・ロリンズのセント・トーマスで締めてしまうという、サービス心全開って感じのソロです。
いつまで待ってもCDが出ないと思って悶々としていたところ、どうやら映像が出ているようです。ブート並みなのでyoutubeで十分などと書かれていましたので検索してみたらありました!
LPに収録されている曲はパニッシュメント・ブルースだけですが、これは目が離せないライヴです。映像は最初、ブルース・フォアマンのソロからですから、是非、食い入るように見てください。とにかく凄いです!パニッシュメント・ブルースは16分からです。これは必見です。壮絶なテンション!これまで全くジャズを聴いたことがなかった人でも、これを見ればジャズの凄さや楽しさが分かるんじゃないかなぁと思います。