Cafe Evil 9

ごくごく普通の何の変哲もない平凡でどこにでもあるようなブログです♪

Sonny Rollins / Saxophone Colossus

 ソニー・ロリンズサキソフォン・コロッサス。このアルバムは、「サキコロ」の愛称で親しまれています。バラエティーに富む収録曲、オーソドックスな演奏スタイル、ジャズの様々な側面が凝縮され、且つ、とっつきやすさを兼ね備えていますから、ジャズの入門編として万人が万人に薦めるそういう実にスタンダードなアルバムです。

 ジャズにもいろいろありますよね。甘美なもの、思索的なもの、先鋭的なもの、前衛的なもの、呪術的なもの、言葉を重ねるとキリがありません。その昔、ジャズ喫茶の醸し出す雰囲気は、一種異様でした。お洒落な音楽が聴けるお店というよりは修行の場という雰囲気でした。威厳があるとは思いませんでしたが西部劇に出てくる場末のバーのような危険な空気が漂っていました。店がそうさせているのか、そこに居付く客のせいなのか、きっと双方なんでしょうけれども敷居がちょっと高い印象でした。ジャズは、なんだか求道的な音楽に思えました。

 1980年前後、未熟さのあまり聴く気にはなれませんでしたが日本の女性ジャズ歌手なるもののテレビ露出度が微妙に高くなった時期がありました。当時、何かの番組で故ジョージ川口氏とともにある女性ジャズ歌手がゲストで登場する場面がありました。司会者のジャズとはどんな音楽かという質問に対して女性歌手が「暗い音楽」と答えるや否やジョージ川口氏が「ジャズとは楽しい音楽だ」ということを説教口調で語っていたのをよく覚えています。筒井康隆氏の短編小説「ジャズ大名」では楽譜が示され、単純なメロディーが次第に複雑にアレンジされてゆく過程がスラップスティックな感覚で実に楽しく描き出されていました。

 「ジャズは楽しい音楽である。」・・・と、最初に感じさせてくれたのが、このアルバムに収録された1曲目のセント・トーマスでした。ソニー・ロリンズのオリジナルで、カリプソ調のリズムを用いたユーモラスな主題の曲です。ロリンズのアドリブは、速過ぎず緩過ぎず、しかもカッコよさのツボも押えて、しかも分かりやすいものでした。こんなヘンテコな主題をここまでカッコよく聴かせてしまえるのはジャズの特権だなぁと思いました。

 君は恋を知らないはジーン・デポール作曲のバラードでかなり線の太いロリンズの演奏とトミー・フラナガンの繊細なピアノの対比が美しい曲です。続くストロード・ロードは急速調の演奏でカルテットの本領発揮といった感じのハイテンションな演奏です。モリタートの別名はマック・ザ・ナイフ。クルト・ワイル作曲の三文オペラのなかで歌われた曲をジャズにアレンジしたものとのことです。ブルー・セブンはロリンズのオリジナルのブルースです。


St. ThomasがSide 2 に...Σ(@◇@|||


 1981年の夏、ライヴ・アンダー・ザ・スカイでロリンズが来日しましたので、迷わず、大阪の万博跡会場に観に行きました。夕陽に照らされた夏の会場で観るロリンズ。スタンリー・クラーク(b)、ジョージ・デューク(p)、アル・フォスター(dr)という豪華な布陣で演奏されました。当時のロリンズの最新アルバムであったラヴ・アット・ファースト・サイトにもこのアルバムに収録されているストロード・ロードが再演されていましたが、サキソフォン・コロッサスの演奏に比べると淡白な気がしました。しかし、生演奏の印象は全く違っていました。ちょっと尖ったテーマの曲なのに、ロリンズの生演奏は実に優美な雰囲気に包まれていました。

 写真のLPはサキソフォン・コロッサス・デラックスという国内盤です。通常盤のサイド1と2が逆になっています。色々調べたのですが理由は分かりませんでした。付属の岩浪洋三さんの解説では、Moritatの演奏が日本でソニー・ロリンズの人気を決定づけた1曲であると書かれていましたので、そのあたりなのでしょうかね。