バド・パウエルは、高い作曲能力と演奏技術を持ち、しかも、非常にメロディアスで解り易くキャッチーなアドリブを弾くという3点において、他を寄せつけない奇才ぶりを発揮したミュージシャンでした。晩年は麻薬に陥り心身ともにボロボロになっていったということですが、彼が作り出した音楽の数々は、永遠に残るものばかりですね。
そうした中、この「ジャズ・ジャイアント」を、まず選んだ理由は二つあります。一つは、このアルバムで聴けるバド・パウエルは、上記3点を完璧に満たしたものだと思えるからです。ブルーノートの「クレオパトラの夢」はわが国で人気の高いアルバムですが、技巧的にちょっと怪しくなっている時期にさしかかっていますよね。ジャズ・ジャイアントの演奏は完璧です。
二つ目の理由は、アルバム全体を見たときに、収録曲がバランスよく配置されていて、A面、B面と聴き分けたときに、それぞれが美しく完結しているからです。特に、当時のアルバムの中には、同じ曲のテイク違いを続けて収録したものがありますよね。かなりマニア度が高い方々が、記録として鑑賞するには面白いんでしょうが、そういうアルバムは好きになれません。特に、アメイジング・バド・パウエル第1集。ウン・ポコ・ロコの3連投。どれか一番いいテイクだけにしといてくれよ、と言いたくなります。
まぁ、そんなわけで、要は、このアルバムが、一番好きなのですよ(^.^)v
そこで、収録曲について少し触れましょう。沢山入っているので、特に好きなポイントだけにしますが・・・
まず、冒頭の「テンパス・ヒュジット」。これはバド・パウエルのオリジナルで、指先のめまぐるしい動きがダイレクトに耳に突き刺さってくるような素晴らしく緊張感の高い演奏です。このアルバムの凄さをまず観客に一発カマシているような、そんなコケオドシ的な凄まじささえ感じられるものです。
B面4曲目の「スイート・ジョージア・ブラウン」。スタンダード・ナンバーをここまで速く、しかも、音数を詰め込んで聞かせる演奏っていうのも珍しいですよね。でも、それが、嫌味にはなっていなくて、ただただ素晴らしいのです。
そして、「イエスタデイズ」。ピアノのソロによる非常に短い演奏です。録音が古くノイズ混じりではありますが、なんだか情念が込められているかのように心に染みます"^_^"