Cafe Evil 9

ごくごく普通の何の変哲もない平凡でどこにでもあるようなブログです♪

Tommy Flanagan / Over Seas

 トミー・フラナガン1930年生まれで、父親はギター弾き、母親はピアノ弾きという音楽一家で育っています。彼は、一言で言えば名脇役ですね。マイルス・デイビス・オールスターズのプレスティッジ・レーベルの各録音、ソニー・ロリンズサキソフォン・コロッサス、ジョン・コルトレーンジャイアント・ステップス等々、歴史的な名盤のサイド・マンとして彼の名前が数多くのレコードにクレジットされています。

 しかし、その一方で、彼のリーダー作はといえば、数えるほどしかないと言われています。そんな中、誰もが認める代表作がこの「オーヴァー・シーズ」です。

 彼はJJ・ジョンソンのコンボのピアノ弾きとして3年間ツアーを行いましたが、そのツアー中にスウェーデンで録音したのがこのアルバムです。録音は1957年8月15日。レーベルはメトロノーム・レコーズでした。写真をみると、白抜きの文字で「TOMMY FLANAGAN OVER」とありますが、その左上の文字が「METORONOME」になっています。因みに、このアルバムは、その後、プレスティッジを通じて世界的にディストリビュートされたため、当時のアルバムを見ると、この「METORONOME」の文字が「PRESTIGE 7134」に替えられています。

 さて、私が、このアルバムに始めて接したのは、某ジャズ喫茶でした。当時知っていた数少ないジャズの名曲の中から「チェルシー・ブリッジ」がかかったのです。デューク・エリントン楽団のビリー・ストレイホーン作曲のバラードです。

 当時は、ジャズの人脈など頭の隅にさえなく、ホントに何の知識もない状態で貪るように聴いていましたので、いいメロディーだけが、す~っと体に入ってくるようなそういう状態でした。もともとはテナー・サックスの曲でしたが、ピアノによる楚々とした演奏は、また、格別な味わいでした。

 収録曲は、アップテンポなリラクシン・アット・カマリロに始まり、アルバム全体に、緩急、静動、様々なタイプの楽曲がバランスよく散りばめられています。

 そんな中に「ヴェルダンディ」というタイトルの小曲がありますが、これを聴くと、トミー・フラナガンバド・パウエルのようにも演奏可能なことが分かります。かなり器用な人だったんですね。急速調のマイナー・コードのメロディーを正確に打鍵する様からは、全くサイド・マン的な要素は感じられません。シンプルなトリオ編成で「意外と弾けるでしょ」みたいな音を聴かされてしまうと、驚きのあまり、ちょっと唸ってしまいます。