Cafe Evil 9

ごくごく普通の何の変哲もない平凡でどこにでもあるようなブログです♪

Mountain / Flowers of Evil

 昨日、マウンテンを載せたのに、マウンテンのことを何も書いていなかったので、本日はこれ。Flowers of Evil。邦題は「悪の華」です。

 マウンテンは、1969年にニューヨークで結成されたバンドで、巨漢のギターリスト、レズリー・ウエストとクリームの素晴らしき世界のプロデューサーで知られるベーシスト、フェリックス・パッパラルディが双璧をなすバンドです。

 レズリー・ウエストの奏法がエリック・クラプトンの奏法に似ている点などから、当時はアメリカ版クリームと称されてもいたようです。しかしながら、私はクリームやエリッククラプトンの良さはさっぱり分からないので(暴言)、マウンテンはそれらとは本質的に違うと思います。

 マウンテンは、基本的には、典型的な、古き良きアメリカのハードロックバンドなのですが、パッパラルディがお勉強したとされる対位法によって書かれている部分があるのだそうで、また、パッパラルディがベースで通奏低音(伴奏楽器が間断なく演奏し続けるということからこの名があるby Wikiだそうです。)を弾いている点が特徴なのだそうです。 このように評論されているのですが、そんな風には全く聞こえないただの古めかしくって、芋臭いハードロックバンドです。

 そうした中で、ほんのちょっとだけクラシカルな面が表面的に現れた曲としては、「ナンタケット・スレイライド」がベストですが、こちらの「悪の華」では、前奏曲「タウンタ」と「ナンタケット・スレイライド」の関係のように、美しいピアノの小曲「キングズ・コーラル」に続いて演奏される「ワン・ラスト・コールド・キス」が収録されています。とはいえ、同年代のプログレの人たちと違って、繊細さのかけらもないところがポイントかなぁと。音は、彼らの風貌通りです。でも、いにしえの評論家の人たちがそうした能書きを垂れなければ、独特の力技のロックは、それはそれでなかなかいいんですけどね。

 パパラルディは80年代のはじめ(だったかな)に奥さんのゲイルコリンズに射殺されてしまいますが、このバンドはその後も活動を続けています。しかし、その後のライブをyoutubeで眺めてみたり、1枚発売されたその後のアルバムを聴いてみたりしたところでは、音の表面をなぞってはいるものの、本質的に変わってしまっていますので、やはり、パッパラルディのバンドだったんだなぁということが、後付けながらよく理解できるところです。

 このアルバムは、A面がスタジオ録音、B面がライヴ録音ということで、マウンテンの両面の魅力が堪能できるというところがポイントです。

 A面は、ノリのいいロックンロールであるタイトル曲、そして、ボリューム奏法のイントロからプログレッシヴ・ロック的な展開をみせる「プライド・アンド・パッション」など秀逸な曲揃いです。

 B面のライヴ・サイドはいきなりレズリー・ウエストのギター・ソロから始まります。ロールオーヴァー・ベートーベン、A面の「ワン・ラスト・コールド・キス」の拡大解釈版、20分を超える「ミルクと蜂蜜の夢」を経て、重低音を生かした彼らのアンサンブルの見本のような「ミシシッピ・クイーン」で幕を下ろします。彼らは、「ミルクと蜂蜜の夢」のような超尺曲「ナンタケット・スレイライド」も2度ライヴ録音しています。彼らの演奏、特に途中のインストルメンタル部分は、当時の時代を反映してすごくゆったりとしているので、今聴くとちょっと古いかなぁという面は否めません。寝転んでウッドストック気分でゆるーく聴くのが良いかもですね。

 このLPはシングルジャケのものとWジャケのものがありますが、オリジナル仕様紙ジャケCDはシングルジャケだったので、そっちがオリジナルなのかなぁ。

 この日本の初盤だと思われるLPには画用紙のような厚紙で豪華な16ページのライナーや歌詞対訳などのブックレットがついていました。マウンテンのアルバムのイラストはゲイル・コリンズが油彩で描いていまして、この厚塗りの濃いタッチが独特でいいんですよ。この悪の華ではバンド名のレタリングのみですが、色使いの巧みさが映えています。