マウンテンは、1969年にニューヨークで結成されたバンドで、巨漢のギターリスト、レズリー・ウエストとクリームの素晴らしき世界のプロデューサーで知られるベーシスト、フェリックス・パッパラルディが双璧をなすバンドです。
レズリー・ウエストの奏法がエリック・クラプトンの奏法に似ている点などから、当時はアメリカ版クリームと称されてもいたようです。しかしながら、私はクリームやエリッククラプトンの良さはさっぱり分からないので(暴言)、マウンテンはそれらとは本質的に違うと思います。
そうした中で、ほんのちょっとだけクラシカルな面が表面的に現れた曲としては、「ナンタケット・スレイライド」がベストですが、こちらの「悪の華」では、前奏曲「タウンタ」と「ナンタケット・スレイライド」の関係のように、美しいピアノの小曲「キングズ・コーラル」に続いて演奏される「ワン・ラスト・コールド・キス」が収録されています。とはいえ、同年代のプログレの人たちと違って、繊細さのかけらもないところがポイントかなぁと。音は、彼らの風貌通りです。でも、いにしえの評論家の人たちがそうした能書きを垂れなければ、独特の力技のロックは、それはそれでなかなかいいんですけどね。
このアルバムは、A面がスタジオ録音、B面がライヴ録音ということで、マウンテンの両面の魅力が堪能できるというところがポイントです。
A面は、ノリのいいロックンロールであるタイトル曲、そして、ボリューム奏法のイントロからプログレッシヴ・ロック的な展開をみせる「プライド・アンド・パッション」など秀逸な曲揃いです。
このLPはシングルジャケのものとWジャケのものがありますが、オリジナル仕様紙ジャケCDはシングルジャケだったので、そっちがオリジナルなのかなぁ。
この日本の初盤だと思われるLPには画用紙のような厚紙で豪華な16ページのライナーや歌詞対訳などのブックレットがついていました。マウンテンのアルバムのイラストはゲイル・コリンズが油彩で描いていまして、この厚塗りの濃いタッチが独特でいいんですよ。この悪の華ではバンド名のレタリングのみですが、色使いの巧みさが映えています。