ジャズの流れをスタイルと人物で概観すると、ルイ・アームストロングに代表されるニューオリンズ・ジャズ(1910年代)、デューク・エリントンに代表されるスイング(1930年代)とはじまります。そして次に来るビ・バップ(1940年代)に、バド・パウエル(p)などとともに、マイルスが登場します。そして、クール(1940年代~1950年代)、ハード・バップ(1950年代)、モード(1960年代)、フュージョン(1970年代)と新しいジャズをマイルスが開拓していったわけです。
この「MILES」は、1955年の録音。マイルス・デイヴィス・クインテットによるプレスティッジ・レーベル初の吹き込みです。メンバーは非常に豪華で、マイルスのほか、ジョン・コルトレーン(ts)、レッド・ガーランド(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・リー・ジョーンズ(dr)がいます。当時、コルトレーンはまだ無名だったということですが、今にして思えば、すごいメンバーですよね。
1954年のハード・バップ宣言直後の作品ですが、ミュート・トランペットのリリカルな演奏を中心に、かなりクールな味わいのアルバムです。
演奏の方は、AB面それぞれに味があって、甲乙付けがたいですね。A面は、すっごく、信じられないくらい地味に始まります。マイルスのミュート・トランペットに免疫がない時代には大嫌いなサイドだったのですが、スルメイカを噛むように鑑賞し続け、耳に馴染んでくると、こんなにイカシタ音楽はないという気になってきましたから不思議なものです。
ヒーリング感覚とでもいうんですかね~。特に最初の2曲は瞑想向きです。ホントにいらいらしたときなどに頭の中をクールダウンさせてくれます。中でも特に冒頭のデューク・エリントン作曲のジャスト・スクイーズ・ミー・・・抱きしめてっていうタイトルですが、この曲のデリケートなことデリケートなこと・・・。ホントにミュートのための曲っていう感じです。A面3曲目以降のアップテンポでグルーブ感溢れるスイングナンバーも最高ですし、そういう意味では、静と動の配置が絶妙なアルバムですね"^_^"