Cafe Evil 9

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Yosuke Yamashita Trio / Montreux Afterglow

 山下洋輔さんのアルバムを初めて買ったのは1981年。当時、バラエティ番組で、坂田明さんがハナモゲラ語でチョウチョを歌いサックスを吹きまくる姿に驚愕して買ってきたのが寿限無だったと思います。当時は、相当聴きまくったものの、その後すっかり記憶の外で何十年もの年月が過ぎてしまいました。

 そんなある日、というのが昨年末なのですが、このLPを買ってきました。そのちょっと前に、山下洋輔トリオの1980年のマル・ウォルドロン・トリビュート(これは普通のピアノトリオです)を聞いていたからちょっと気になって手にとってしまったのですが・・・。

 ところが、これが爆弾でした。もともとフリー・ジャズにハマれたことは、後にも先にも、リチャード・エイブラムスくらい。なかなかハマれない原因がこれまではよくわからなかったんですよね。そうした一種の帳のようなものが、このアルバムで微妙に晴れつつあるという感じです。

 一応、フリーは、どのような音楽理論や形式にも従わないものといわれていますが、一応、曲の最初と最後にテーマは奏でられる場合が多いですよね。途中のアドリブを、順番に回したり、ドラムと管やピアノがチェンジしたりしないというような従来のジャズの様式はほとんどの場合破壊されていて、アドリブの部分では、絶叫奏法だとか、パーカッシヴ奏法だとか、クラスター奏法だとか、まぁ、めちゃくちゃなノイズを破壊的に出したりする、全体として暴力的な音を出すものが多いようです。客観的に書くと、フリーはこうした感じに聴こえてしいます。

 そこで、どのようなフリーなら聴けて何が聴けないかについては、やはり、感性が合うかどうかなのではないかと思うのです。山下洋輔さんのフリーは、肌に合う、というか、間の取り方が手に取るようにわかるというか、絶叫と静寂のバランスに波長が合っているというか、まぁ、そのように、理論的にではなくって動物的に合うと思うのです。

 このモントルーのライヴは、両サイド各1曲です。ゴーストはアルバート・アイラーの曲ですが、坂田明さんがアロリブの中で吹く赤とんぼのメロディーが混沌とした音の塊の中に立つ道標のように、曲にアクセントをつけるとともに、この先どう進むのかということを感覚的に示しているように思います。オリジナルよりは断然こちらです!

 また、バンスリカーナは、もともとは、1976年の山下洋輔さんのピアノソロのアルバムのタイトル曲でしたが、これをトリオで約23分に渡って破壊的に演奏しています。ここでのテーマは坂田明さんがアルトサックスで吹いています。ドードドbレードbレード、bラーラファドbシドードというメロディーは見事に和的です。このメロディーがカオス的な演奏の中で呪術的に響いています。こうした、多分ですが、一般化または普遍化されていない音というのは、種族にマッチしやすいってことなんでしょうね。やっていることは超絶技巧の世界なのに出てくる音は実にプリミティブ・・・だからでしょうね。