そんなある日、というのが昨年末なのですが、このLPを買ってきました。そのちょっと前に、山下洋輔トリオの1980年のマル・ウォルドロン・トリビュート(これは普通のピアノトリオです)を聞いていたからちょっと気になって手にとってしまったのですが・・・。
ところが、これが爆弾でした。もともとフリー・ジャズにハマれたことは、後にも先にも、リチャード・エイブラムスくらい。なかなかハマれない原因がこれまではよくわからなかったんですよね。そうした一種の帳のようなものが、このアルバムで微妙に晴れつつあるという感じです。
そこで、どのようなフリーなら聴けて何が聴けないかについては、やはり、感性が合うかどうかなのではないかと思うのです。山下洋輔さんのフリーは、肌に合う、というか、間の取り方が手に取るようにわかるというか、絶叫と静寂のバランスに波長が合っているというか、まぁ、そのように、理論的にではなくって動物的に合うと思うのです。
また、バンスリカーナは、もともとは、1976年の山下洋輔さんのピアノソロのアルバムのタイトル曲でしたが、これをトリオで約23分に渡って破壊的に演奏しています。ここでのテーマは坂田明さんがアルトサックスで吹いています。ドードドbレードbレード、bラーラファドbシドードというメロディーは見事に和的です。このメロディーがカオス的な演奏の中で呪術的に響いています。こうした、多分ですが、一般化または普遍化されていない音というのは、種族にマッチしやすいってことなんでしょうね。やっていることは超絶技巧の世界なのに出てくる音は実にプリミティブ・・・だからでしょうね。