作者はピーター・ロイド。カンサスの暗黒への曳航の作者です。彼の描いた最もメジャーなカヴァーアートはロッド・ステュワートのアトランティック・クロッシングではないかと思います。光の粒の描写が一際鮮やかです。
このアルバムが発売された1977年は、前年にボストンが衝撃的にデビューを果たしチャート上位を占め続け、更にカンサスが永遠の序曲を発表してブレイクした直後です。正にアメリカン・プログレ・ハードのウェーヴが起こりつつあった時期でした。
このスターキャッスルも同様に注目を集めていたわけです。エピックとの契約を果たしたスターキャッスルの第2作目ということで、また、そうした動きの中で登場したアーチストでしたから国内盤を出しているソニーもそれなりに力を入れてたみたいで、カンサスが77年に発表した不動の名作「暗黒への曳航」のライナーノーツの隅にもボストンの1stとともにこのアルバムが印刷されていました。
ネット配信的な天敵が登場しようとは夢にも思っていない時代でしょうから、ビジネス的にはドメスティックな共存共栄思想の中で、評論といいつつも学芸会的なノリだったのでしょうかね~。曲名の邦題も酷いです。A2は「燃える夜明け」。どこかで聞いたような・・・。
さらに、ライナーのヘッドには「スターキャッスルはアメリカン・ロックの土壌の上にスペイシーな音を駆使してポップなプログレチック・ロックを創り上げてしまった」という失礼なコピーが入っています。売ろうとしてるのに傍点付きで「チック」はないのではないかと。商売っ気がなさスギです。
まぁ、そんなわけで、我が国では偏見丸出しのレッテルを貼って市場に投入され、微妙にコケてしまったスターキャッスルではありますが、そういう摺り込み系の事前知識をすべて無視して素直に聞くと、素晴らしくいい音を出しています。
第一に演奏がしっかりとしています。流石にアメリカのバンドだけのことはありリズムキープや音程が正確です。アンサンブルの縦線がビシッと揃っています。イエスのハウ爺のお粗末なタイム感とは比較にならないくらい。
第二にファースト・アルバムと比較してみると、同一路線でありながらも、無駄な部分がそぎ落とされ楽曲が相当にシェイプされていまして、緻密な演奏であるにもかかわらず音も力強くぐいぐい前に出てきているという印象です。イエス的に聞こえる部分はボーカルの声質とギターのか細い音色くらいではないかと思うのですが。ちゃんと聴くと、意外にも骨太でアメリカのバンドらしい仕上がりだと思います。何よりのアクセントはシンセの装飾音です。エッジが立ったリード音はかなり好みです!当時売り出し中のプロデューサー、ロイ・トーマス・ベーカーの力技だったのかもしれませんね。
アメリカン・プログレ・ハードといわれるバンドの音にもある程度の幅がみられますが、スターキャッスルの音は、最もブリティッシュに近いのではないかと思います。僅か4枚で姿を消した短命のバンドの最高傑作です!