フィル・ウッズとヨーロピアン・リズム・マシーンのアライブ・アンド・ウエル・イン・パリです。
録音は1968年11月14日と15日。写真は1986年に出た東芝音工盤です。
フィル・ウッズは1983年と1984年にグラミー(Grammy Award for Best Jazz Instrumental Album)を受賞し、来日もしています。
その際には地方の小さなクラブも回って演奏をしていました。私は運良く、とあるジャズ・バーでほんの5メートルほどの距離でフィル・ウッズの演奏を聴くことができました。
このアルバム裏面の岩波洋三さんの解説によると、1960年代末のニューヨークのジャスジーンは飽和状態で才能があっても出ていけない状況にあり、多くのミュージシャンがヨーロッパに本拠を移して活動していたのだそうです。フィル・ウッズはパリに移り住み、1968年にこのバンドを結成しこのアルバムを録音しました。
1950年代には数多くの名演がブルーノートやプレスティッジ等々に録音されています。このアルバムの録音はその10年後です。50年代の録音との圧倒的な違いは、息遣いやそれによる抑揚が細部まで鮮明に録音されている点です。
フィル・ウッズはもともと相当な技巧派ですがその演奏がレコードを通して目と鼻の先で演奏しているようにビシビシ伝わってくるところがポイントかと思います。一度生で聴いているのでプラシーボ効果かもしれないですけどね。
そして、何にも代え難いのはテーマの美しさ、それに加え、アドリブの圧倒的な煌めきです。この演奏を抑揚がつきすぎていて臭いと仰るロートルのファンの方々もいらっしゃるようですが、それは違うと思います。ギターがアルビン・リーからジョン・ペトルーシに進化したように、サックスの世界も進化してるんですよね。コード進行を指癖だけで追っているジャズのアドリブはどの曲を聴いても金太郎飴のようにみんな同じで面白味はありません。曲芸的に指が早く動いても、あっそう、っていう感じなのですが、若かりし頃で紡ぎ出されるアルトとピアノのメロディーは圧巻です。文字を尽くすよりも、貼り付けときますね。長年のヘビロテです。