1977年4月にリリースされたイアン・ギラン・バンドのセカンド・アルバム。アルバムのタイトルはクリア・エアー・タービュレンス(晴天乱気流)、邦題は「鋼のロック魂」です。ハードロックとファンクとフュージョンとプログレが絶妙の均衡を保って一体化している、類まれな音として非常に重要な意味のあるアルバムです。
もちろん、このアルバムが出た当時、パープルのボーカルのソロ第2弾という情報だけで、しかも、この中にどんな音が入っているかなど判らないで、ただただジャケの迫力に目を奪われて買ってしまった訳ですが、結果的に、趣味嗜好とピタッと重なり、いまだに聴き続けている稀な一枚に巡り合うことが出来たのでした!
ロック・バンドが制作するアルバムを縦断的に見てみると、長いキャリアの中で突然変異的に制作した異色作が素晴らしく良いということがたまにあるように思います。しかも、そうしたアーチストは前後の時期にいい加減ブレイクしていて、総じてその谷間で制作されたアルバムは、世間的には大した評判にもならず、ロックの歴史の中ではほぼ完全に埋もれてしまっていたりするのです。
聞き手としては、狙いを定めて狩猟をしている、というよりは大海で漁でもしている感じで引き当てた一枚というところなのですが、このアルバムは、個人的にハマってしまって長年のヘヴィー・ローテーションになっています。…何十年と音楽を聴き続けた人たちなら1枚や2枚こうしたアルバムがあるに違いないと思うのですが、私の場合は、カンサスの永遠の序曲やイエスのこわれものや危機と並ぶくらいの位置付けになっています。
このアルバムは、曲調を分析すればただのファンクかディスコミュージックなのかもしれないし、ちょっとラテン色加えてみました系のハードロックなのかもしれないのですが、そうした、ありそうな手法で作られたアルバムではありながらも、民族色豊かな、なかなか雄弁なタイプのミクスチャー・ミュージックに仕上がっているのではないかと思います。
コズミック・エナジーたっぷりのClear air Turbulence、クイーンの華麗なるレースを想起させる導入部から、ジェイムズ・ブラウンばりのファンクに突入し、レイの職人的に華麗なギターワークへと繋がる展開の速さに目が回りそうです。そして、曲間を空けずにインディアン・フルートで始まるファイブ・ムーンズ、美しすぎです!サックスのソロが曲想によくマッチしています。
続くマネー・レンダーでのイアン・ギランのキメのシャウト。曲がパープルとは異なり、かなり玄人っぽくというか職人っぽく練りこまれていますので、思いっきりのシャウトも曲の流れの中で実に自然に無理ない感じですからっと耳に入ってきます。
オーバー・ザ・ヒルでは、フュージョン系の正確なタッチのリリカルなピアノのソロやケチャ風のコーラスまで登場します。なんて凝り様!
グッド・ハンド・ライザのアフリカンなビート、エンジエル・マンチェニオの美しすぎるギター・・・もう目が放せないくらい随所に見せ場が散りばめられたスピード感溢れるアルバムです!
パープル黄金期のボーカリストだなんていう先入観を振り払って素直に聴くべき傑作です!