The Serpent is Rising (サーペント・イズ・ライジング / スティクスIII)です。
スティクスの発表したアルバムの中でも、初期、ウッドン・ニッケル・レーベル時代の4枚はかなりプログレ色の濃い内容となっています。その中でも極め付けがこれです。
ブリティッシュプログレの影響が色濃く残っていて、しかも、アメリカン・プログレッシヴ・ハードというほどにはこなれていない、そういう創作過程の音という感じです。アメリカン・プログレッシヴ・ハードなどといったロックのサブジャンル的な一代ムーブメントの黎明期には、ピリッとしたそうしたジャンルを象徴する一枚が出てくるものです。カンサスの永遠の序曲やボストンのデビュー盤みたいにね。そんな中、このアルバムは、時代の隙間に埋まってしまっていて、誰もそういう一枚には選ばないかもしれません。しかしながら、個人的に、このアルバムは、一押しなんですよ!英米の当時のあらゆる音楽の要素を塗りこんで描き上げたような、一種独特の臭みのある音だと思っています。
トータルの印象では、ブリティッシュ系のリフ主体でゴリゴリ押しまくるタイプのロックとメロディー優先型のアメリカン・ハードの中間あたりの音っていう印象なのですが、曲は非常にバラエティに富んでいて、そうも簡単に言い切れないところがまた素晴らしいところなんですね。
young manでは一瞬キャッチーに聴こえるハードロック的な楽曲の背景でキーボードがこれでもかというくらいに弾き倒していたりします。A面最後のas bad as thisは、途中からなんとバナナボートに展開します。なんでもありですね。
B面に移り、短時間のコンパクトな曲の中で非常にドラマティックな展開を見せるタイトル曲、そしてその後に、お前らブラック・サバスかと思ってしまう悪魔的大絶叫のカラカトゥアを経て最後はハレルヤコーラスで大団円という、一見めちゃくちゃな構成なんですが、それを押してなんだかビシッと纏まってるなぁという印象の不思議なアルバムなんですよ。
そして、そうしたアルバムに散りばめられた曲想をヴィジュアル化するかのごとく、コラージュで作成された素晴らしいジャケット・アートには目を奪われてしまいます。このジャケットは、スティクスの数あるジャケットの中でもかなりの存在感だと思います。というばかりではなく、ロックの数あるジャケットの中でも指折り数えられる範囲に入りそうな極めつけのデザインではないでしょうか。ルソーの蛇使いやダリの内乱の兆しと並べてみても遜色無いように思います。思い込み強すぎかな。
マイナーなウドゥンニッケル・レーベルにあって奇跡の一枚ともいえるかもしれないですね。何十年という風雪に耐え未だにヘビロテです。飽きないんですよ。