今朝の前衛2投目は、アール・ゾイは1968年にフランスで結成された前衛プログレ・バンドです。1970年代末に、コマーシャル化する音楽産業に反旗を翻す格好でヘンリーカウに扇動されて興ったムーブメント、また、彼らによってロンドンで実施されたフェス(R.I.O.=Rock inOpposition)に参加したフランスの旗手的なバンドです。
R.I.O.の一派には、ほかに、Stormy Six (Italy)、Samla Mammas Manna (Sweden)、Univers Zero (Belgium)、Art Bears(UK)らがいました。いずれも、フリー・ジャズや前衛音楽の影響下にある根暗な音楽です。
このアール・ゾイの「旅の音楽」は、1979年のリリース。写真は1983年のCryonic盤です。微妙にパーカッションが入ることはあるものの、全般に打楽器なしでストリングスが奏でる暗鬱なリズムとメロディーが核になっています。この音を聞くと、彼らがイメージしている旅は、TDRで家族で陽気にとか、箱根で温泉にでもはいってのんびりみたいな種類の旅ではないことだけはよくわかります。
ストリングな不気味に鳴っている底の方で輪郭のぼやけたベースが鳴っており、時折、暴力的にヴァイオリンとヴィオラが斬り込んできたりするという、本当に精神的に不安定な人たちがやっているのか、又は、聴衆をそうした状態にせたい人たちがやっているのかの2択だろうなと思える病的な音楽です。
そりゃ、音楽産業界からは相手にされないよな、ということが頭の2、3分聴いただけで十分理解できます。同系統の音楽には、メジャーなところではタンジェリン・ドリームのツァイトが挙げられます。ただし、こちらのアール・ゾイの方がはるかに音数が多く音楽的です。
それから、この音楽がロックと呼べるのかについても、賛否分かれるところだと思いますが、Bruit, Silence - Bruit, Reposのベースを中心にアグレッシヴになるあたりは若干キング・クリムゾン的なので、まぁプログレなんだろうなぁというところ。
ちなみに、このアルバムのジャケットですが、これは1983年のフランス盤です。1979年発売時のジャケットと2013年に再発された際のジャケットが異なりますので載せておきますね。
<左1979年、右2013年>
こんな変質的な音楽でも、最近ではリマスター盤が発売されています。そのジャケットは左の1979年のオリジナル仕様でした。