Banco Del Mutuo Soccorso(バンコ・デル・ムトゥオ・ソッコルソ)のファーストアルバムです。バンコは1969年にノチェンツィ兄弟が中心となって結成したイタリアのシンフォニックロック・グループです。
彼らはブリティッシュ・プログレッシヴ・ロックの影響下にあって、イタリア独特の民族的なメロディーラインに洗練されたクラシックやジャズの要素を盛り込み複雑かつアグレッシヴな大作を発表しました。彼らの代表作としては、1stから3rd(この壷、ダーウイン、自由への扉)、6作目の最期の晩餐が挙げられます。
その後バンコは、マンチコア・レーベルと契約、75年に世界進出を狙うもののイマイチ受け入れられず、以降、イタリアの音楽シーンの商業化に押され、徐々に音がポップ化していったようです。85年にジャンニ・ノツェンツィが脱退して、解散かとも思われましたがその後も細々と活動を続け、何と、97年5月末に初来日を果たし、当時の大作を演奏しています。
さて、この1971年にリリースされたセルフ・タイトルのアルバムですが、初盤は、何とこの壷の形の巨大変形ジャケットだったようです。写真は、変形紙ジャケCD。見たとおり貯金箱(バンド名は協同組合銀行)なのですが、そのお金を入れる穴のところに引き手がついていて、それを引き出すとメンバーの写真が出てくるという凝ったものです。 収録曲全5曲の邦題は、順に、飛行中、安息の鎮魂歌、経過、変身、魔術師の国(...一歩、また一歩...人は笑い、人は泣く...風にそよぐ紙...浸透力...)、痕跡です。
このアルバムは、効果音的なキーボードと子供たちのコーラスで幕を開けます。2曲目の安息の鎮魂曲は、バンコのメンバーも非常に気に入っている曲だということです。ハイライトは、4曲目の変身と5曲目の魔術師の国。この2曲は、プログレってどんな音楽なの、と聴かれたときに、「これだ」といって聴かせてあげたいような、粋の詰まった曲です。
変身は、個人的には最も好きな、今でも、かなりの頻度で聴いてる激押しの1曲です。10分くらいの曲なのですが、延々と、目まぐるしいインストルメンタルパートが続き最後の最後にボーカル・パートが出てくるのですが、その愁いを帯びたメロディーラインの美しいこと美しいこと!ジャコモおぢさん(R.I.P.)のボーカルはルチアーノ・パヴァロッティを髣髴させる大熱唱です!
続く魔術師の国もそうなのですが、リリカルなピアノに導かれてキメフレーズを挟みハモンドオルガンを主体とするジャムセッションに突入するなど、極端な緩急を巧みに使った表現力も抜群です。何より、彼らの音は、荒削りで骨太なところがいいんですよ。英米にはないタイプ。独創的な世界観で演奏されているシンフォニック・ロックですね。